なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

一年に一度きりの特別な一人だけの夜

なぜかこの日だけは、一年に一度自分が家族の誰よりも遅くまで起きていられた。いつも寝床に入るのは一番早いくせに大晦日の12月31日だけは、なぜか眠たくない。明日になれば新しい年が始まるワクワク感に睡魔はどこかに飛んで行って、ひたすらカウントダウンを待つ。

毎年この日に何か特別な事をする訳ではない。子供の時も大人になってもそれは変わらずただ年末特番をだらだらと見て、すき焼きを食べたりするくらい。だけど、どう言えばいいのだろう?高揚感のようなものが自分を包み鼓動が高まるのだ。早く除夜の鐘がゴ~ンって鳴らないかなって。でも年が明けてしまうともうすごくどうでもよくて、あっさりと布団に入って寝てしまう。家の皆んなが次々と眠りにつくなか、一人起きて新年を迎えるというのがよかったのかもしれない。

子供の頃は夜更かしを許されていなかったから、そういう夜に対する憧れみたいなものもあったのかも。ついさっきまでガヤガヤしていた居間はしんとして、家族はもう違う夢の世界を歩いている。

ストーブの上にかけたやかんがしゅんしゅんと音を立て、小さくしたTVの音をかき消す。心細くもあり、それでいてどこか一人を楽しむ自分もいて夜中という自分にとっては未知なる世界を旅しているよう。そうこうしているうちに、TVの中の除夜の鐘を一人厳かに聞く。ああ新しい年を無事に迎えられた。安堵と新しい年への期待を胸に、いつもはしない夜更かしに少し熱っぽくだるい体をすっかり冷たくなった布団にもぐりこませ、自分の新年は始まる。

そんな長年の自分の大晦日の風景も大きく変わった。数年前からうちにTVはなく、とても静かな年末になった。去年はたぶん娘と2人、早々に寝たような気がする。そんな年末も平和でいい。夜中に対する憧れは今もあるけれど、基本的には娘よりいつも早く寝てしまう自分なのだ。今年はどんな12月31日になるだろう?楽しい一日になるといいなと思う。