なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

秋のはじまりの日

朝、庭に出てみると空気が少しひんやりしている。しんとして、なんとなく秋の気配を感じる静けさ。今日は日曜日ということもあり、車も少ないとはいえ、夏のにぎやかさはもうない。カラッと晴れ、空はどこまでも高くキレイでどこか自然の中に身を置きたい気分だ。

娘と2人少し家から離れた公園に行くことにした。この公園は自分が保育園から中学まで育った街にある。といっても自分がその街を離れた後にたぶん完成したと思われるから、子どもの頃ここで遊んだ記憶はない。でもなんだか懐かしい。今住んでいる所よりも田舎でのんびりとして時間の流れがゆったりとしている。公園にいる人の会話のちょっとしたイントネーションに子供の頃を思い出す。ボール遊びをしているお父さんと子供、シートを敷いてお弁当を広げているおばあちゃんと孫。その近くをトンボの群れが飛んでいる。野球の練習をしている中学生もちょうどお昼どきで楽しそうに笑い声をあげながらお弁当を食べていた。

少し涼しくなった風を体に感じながら、コンビニで買ったお昼を2人で食べながら座っていると、やっぱり今いる所が自分達に合っていないのではないかと思い始めた。時間の流れが速すぎてついていけていない。いつも気を張り乗り遅れないように、溺れないように頑張り続けている自分達。当たり前すぎて気が付かなかったけれど、かなり無理をして生きてきたのではないかなと思った。それが証拠にこの公園のある街のゆっくりとした時間が心地よくほっとするではないか。遠くで秋祭りの太鼓の音が聞こえる。懐かしい馴染みのあるリズム。もし自分がこの街を出なかったとしたら、どんな人生だったのだろう?もっとのんびりとして自分らしく生きられただろうか?家族はバラバラになって育った家はもう誰か知らない人が住んでいるけれど、そうじゃなかったらどうだったのだろう?少し古ぼけた遊具を見ながらふと思う。懐かしくもう戻らない日々。水筒で持ってきたコーヒーを飲みながら、胸がなんだかじんって熱くなった。トンボは相変わらず群れて飛んでいる。秋のはじまりの日。あの頃はもうない。