なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

切る切るそして切る

この家に引っ越して17年余り、庭は私がコツコツ好きなものを植えてきた。

オリーブの苗木は大木になり、ハーブも大きくなった。環境に適したものは、勢力をのばし、自分の陣地を広げ、それに負けたものは消えていった。

私が生き生きしていたとき、庭もみどりに溢れていた。ハーブ類やベリー類、小さな草花も咲き、鳥や虫がたくさん訪れていた。にぎやかで生命力に溢れていた。

でも心が傷つき、体がしんどくなり、少しずつ庭の手入れもできなくなっていた。一度、数年前に見かねた娘が手伝ってくれ、整理をしたものの、私の心のように影のある淋しい庭となっていた。

そんな中、スズメバチが巣を作り始めた。娘も少し、手入れされていない庭が気になっていたようで、ハチのこともあるし、庭の掃除をしようと言ってくれた。

といっても、体調は万全ではない2人。休みながらも、少しずつ切ったり抜いたりしていく。1人では今まで絶対できないと思っていた木も、ノコで切ることができた。お日さまに当たり、ノコは私、剪定ばさみは娘と黙々と作業する。パチッ、パチッ、ギコギコ、余計なことを考えず、ただひたすらに切る、切る、そして切る。途中から自分の執着がなくなり、娘が心配するくらい抜いたり、切ったりした。

オリーブの木こそ残ってはいるが、更地に近い庭。こんなに広かったかな・・と思った。風がひゅーっとふき抜けていく。また、作ったらいいと思った。今の自分の体力にふさわしい庭を。モノクロの私の心に色が戻ってきたら、絵を描くように少しずつ植えていけばいい。ただ、今は少しこのままで・・・。心と体に”力”が戻るのを待つ。