なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

毎日が真剣勝負

3つ下の弟とは、よくケンカをした。いつもささいな事でバトルが勃発。ほとんど毎日ケンカしていたと思う。追いかけてくる弟から逃げ、2階の部屋に入り引き戸を閉める。カギがないので、両手で戸を押さえて、弟が侵入してくるのを防いでいた。「開けろや」「いやじゃ」しばらく戸のところで攻防が続いていた。急にしんとなる。ホッとしたのもつかの間、引き戸のすき間から、ものさしを入れてきて攻撃してくる。それでも頑張る私に、弟はさらなる事を仕掛けてくる。押さえている手のところに「ブッーブッー」と息を吐きかけてくる。「わっ」と手を放した隙に、部屋に入ってきて、また取っ組み合いのケンカとなる。

ある時は、サンタさんからもらった超合金のロボを使って、私を狙ってきた。そのロボはボタンを押すと、手の部分が飛んでくる仕組みになっていた。アニメを一緒に見ていた私は、そのパンチの破壊力をよく知っていた。ボンボン、両手から放たれるパンチ、アニメとは違い、スルリと私はよけ、素早く手の部分を拾う。「返せや」「ば~か」ほんとばかな姉と弟である。

また違う日には、ベルトを装着して、戦いを挑んできた。いちいち、ベルトを操作して、変身してから攻撃してくる弟。2回目ともなると、下を向いてベルトをいじっている弟の頭を、ポカリとしてやる。「ひきょうなぞ」と真っ赤な顔で怒ってくる。

そんな戦士たちにも休息の時間。夜になり、2段ベットに2人とも入る。上は弟、下は私。昼間のケンカにムカムカしていた私は、なんとか仕返しをしてやりたいと考えていた。ヨガのポーズみたいに寝たまま足を上に伸ばし、弟の寝ている上の段をつついてみる。何回目かのとき、はめこんでいるだけの床板がパコっと大きく動いた。寝入りばなを襲われた弟。騒ぎ始める。母に「うるさい」と叱られ、その場は一旦収まるのだ。朝になり、弟は夜の恨みを晴らすかのように、嫌がらせをする。マーガリンを渡さない、歯磨きの時に横入りするなど、朝からフルスロットルで・・。

そんな日々に、突然終わりがくる。私が中学の時、両手をがっつり組み足は踏ん張って力で押し合いをしていた。一番下の弟はその足元でファミコンをしている。ぐ~っと何回も押し合う。そしてなぜか同時にやめて手を放した。それから二度と弟とケンカすることはしなくなった。これ以上は、ヤバいとなぜか同時に悟ったのだ。弟とケンカすることで、力加減や卑怯な事はしないなど、多くを学んだ。

弟とのケンカは、いつも一対一の真剣勝負だった。ケンカなどもちろんしない方がいい。手を出すなんてもってのほかだ。でも成長の過程で、私と弟には必要なものだったのだろう。そのことで、他人とはそういうケンカはしなかったように思う。そんな弟とは音信不通となってしまった。色々あったけど、お互い元気で生きていたらそれでいいかなと思う。