なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

ぴーちゃん

小学生の頃、卵を温めていた時があった。

近所に住んでいる鳥を商売にしているおじさんがくれた卵で、外で遊んでいた私に「温めてごらん。ひなが生まれるかもしれないよ」と言って、手渡してくれたものだ。私は嬉しくて、卵を手に、落とさないようにゆっくりと家に帰った。母に言って、タオルをもらって、それに卵をくるんで、両手で胸の所で抱いて温めた。ひなが生まれたら、「ぴーちゃん」って名前にしよう。ふわふわの産毛のひな鳥が誕生するのを疑わず、一生懸命、学校に行っている時以外は、温め続けた。

数日が経ち、母がそのおじさんに道で会った時、「本気にしてたのか。あの卵は温めたって、かえらない卵だ」と言ったと、家で私に話してくれた。

私はすごく悲しくなって、一人で部屋で泣いたと思う。ぴーちゃんが生まれない悲しさより、うそをついて平気で人を傷つける大人が許せなかった。

この話を書こうと思った時、どうしても、卵が最後どうなったのか思い出せなかった。たぶん、とてもつらい終わり方だったから、記憶から消してしまったみたいだ。

この世に生まれる前に、自分で今世でどういう学びや体験をするか決めてくるという話がある。ならば私のテーマはこれだと思う。「愛が分からない人達はいる。でも自分は、自分を愛し、人を愛すること」私にはなぜかこういう悲しい事が多い。でも、それも学びなのだろう。自分は絶対にこういう事は人にしないと思うのだから。