なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

オセロゲーム

黒い服ばかり、ここ何年も着ていた。それ以前は他の色や柄ものも着ていたし似合ってもいたと思う。でもある時から、黒色以外全く似合わなくなってしまった。元々そんなにオシャレ度数の高くない私でも、なんとなくそれっぽく見える黒。コーディネートに使う脳みその分量も少ない脳疲労気味の私にとっては、まさに救世主だった黒。そんな日常が当たり前になり、クローゼットの中は真っ黒。その状況に何の疑問ももたずにいた。周りの人からも黒が好きだと認識されるくらいだったから。

そんな私に変化が起きた。今年の1月に入ってから、黒一色がどうにもこうにも無理になった。日に日にそれは大きくなり遂に爆発した。「ムリだ。よし服を買いに行こう」と一人。ユニクロへチャリをとばす。毎年ユニクロのハイネックのセーターを愛用しているから、まずグレーあたりにしてみようと店に行く。グレーはなかった。かといって他の色を着る自信もない。でもここで手ぶらで帰ったら、また”真っ黒”に戻ってしまう。それだけはイヤだ。

しばらくセーター売り場の前で悩み、買ったのは白のハイネックのセーター。反対色だ。それが逆によかった。こういう時は思いっきり振り切った方がいい。持っている黒い服とも相性がよく、何より少しだけ前に進めた気がした。

影のように自分の気配を消して、目立たずに生きていたかったんだと思う。傷つきすぎて人と関わるのも怖かったし、心の内ものぞき込まれるのもイヤだったから、黒という全てを飲み込み闇にしてしまう色で自分をごまかしてきた。そんな生き方に、そろそろピリオドを打ちたいと思ったのだと思う。

娘相手でも手加減をしないオセロゲーム。黒一色のゲーム盤に満足気な顔。娘は悲しそうだった。そんな事をふっと思い出す。どうして私はその時、子ども相手にフェアじゃないと言わなかったのだろう・・・いや言ったのかもしれない。相手には届く訳もない声で。

オセロゲームの角を取った私。これからは一つ一つゆっくりと白にしていこう。相手から強引に奪ったりせずに。