なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

ごはん粒

私は立体工作がとても苦手で、サイコロを作ったりとか、展開図などがすごく難しい。最後の最後でズレたり、長さが足りないなど、よくある。いつも力わざで無理にくっつけてしまう。しかし、これは算数が苦手な私だけの問題ではない。

子どもの頃、家に文房具がほとんどなかった。私は、いつも母に工作の宿題の時は、”のりを買っておいて”と頼むのだが、100%家にのりがあったことはなかった。他のものもそうだ。カッターやセロハンテープなど、およそ、子どもの家にあると思われるもののストックは皆無だった。自分のお道具箱は学校に置いてあったのか?記憶は定かではないけど・・とにかくなかった。

夜になり、後はのり付けだけの段階で、母にのりがあるか聞く私も私だが、何せ組み立てるまでの展開図を作るのに無茶苦茶時間がかかるため、いつも夜になっていた。「お母さん、のりは?買っておいてくれた?」というと「忘れた」と一言。「もう!!明日持っていくのに」と私。

すると、母はいつもこう言うのだ。

「そんなのは、ごはん粒でつけておいたらええ。」と。

そして、冷やごはんを少し皿に載せ持って来て「ふん。ちょっと潰して、ぐっと押さえておき。大丈夫、くっつく。」と・・・。半ば半泣きながら、ごはん粒を潰し、ボール紙に載せ押さえてみる。ごはん粒がぼこっとして、その段階で上手く組み立てられる確率はかなり低い。なのに母は「ほれっ。くっついた。母さんの言うことに間違いはない。」と言うのだ。次の日、ボコボコとしたのり面ながら、なんとか宿題を提出してしまうものだから、先生に呼び出されることもなかったため、のりを一度も用意してくれた事はなかった・・・。

それから少し大きくなった私は、お小遣いで文房具を買うようになったから、ごはん粒の出番は少なくなっていったと思う。なんだろう・・・。今となってみると、不思議な家だった気がする。気のせいかな・・?