なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

指で割ると思っていた

「君はくるみの割り方も知らないのか」

当時付き合っていた彼のお父さんから言われた言葉だ。からつきのくるみを見たのも初めてだったし、くるみを家で食べる習慣もなかった私は「はい」としか答えられなかった。ハサミみたいな道具でくるみを割り、口に放り込んでいくお父さん。自分の家にはない光景がとても新鮮だった。

私はどちらかと言えば海育ちだから、家で母が食べていたのはいりこだった。私のおやつもいりこ。「母さん、お腹空いた」「いりこでも食べとき」これが我が家の日常。「カルシウムが取れるんよ」と母はよく言って食べていた。そういえば私は一度も骨折したことがない。もしかしていりこのおかげかもしれない。ありがとう、いりこ。育ったところが違うとこうも食べ物から生活スタイルまで変わるものなんだって思った。少し怖かったお父さんだったけれど、なんだかくるみを食べている姿は可愛かった。くるみが大好きなんだなあって思った。

まだ二十歳くらいだったから「はい」としか言えなかったけど、今だったら「くるみの割り方教えてください。」ってあのハサミみたいな道具の使い方を教わって、くるみを割ってみたかったなあ・・って思う。お父さんのふるさとはどこだったんだろう?彼とはその後、少しして別れてしまったから分からないままだけど。

くるみを割ると言えば、ジャッキーチェンの酔拳が一番に思い浮かぶ私。映画のそのシーンをよく観て、くるみ割りにチャレンジして、マスターしておけば良かったなあ。そうしたら、お父さんとも話が弾んだかもしれない。「ほお~っ、君は指で割るのか?」「はい、ほら」なんてね。流石にかたくて私の握力では無理だっただろうけど。なんかまた酔拳が観たくなった。大好きで、もう何回も観てるのだけど・・ね。