なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

みかんと弟

みかんって色んな食べ方がある。りんごもあるのかもしれないけれど、皮も手でむける分、個人個人好きに気軽に食べられる気がする。自分の3つ下の弟は薄皮(じょうのう)についている白い筋をていねいに取る。時間をかけすぎてみかんが温かくなるくらいに。そしてつるっとなるまで全部取ってからひと房ひと房ゆっくりと食べる。

こたつに入りながらその様子を見るのが自分は案外好きだった。同じ親から生まれても違うもんだなって。果物をあまり食べない弟だったけど、みかんは時々食べていた。母は薄皮は食べず果肉だけを食べる派だった。ゴミ多め。そういえば姑もそうだったように思う。その年代に多い食べ方なのだろうか?よく分からないけど・・・。

私といえば、まず外の皮をびりびりと向いてから白い筋もほどほどに半分に割って口にパクリと放り込む。だいたいそんな感じだからみかんを食べるのはむちゃくちゃ早い。娘に「母さん、いつもゆっくりなのに時々すごいはやいときあるよね」と言われたことがある。意味のない事ははやいのかもしれない。はやくしなくていいって事ははやくして、はやくしなくてはいけない場面ではのろいのだ。2個目のみかんの外皮をびりびりしながらそんな事を思う。

みかんを食べるくらいに何でもはやくできたら、今こんなことになってなかったかもしれないな・・・。あっという間に飲み込んだみかんは甘くて果汁もたっぷりでおいしかった。ちゃんと味わってゆっくり食べればいいものを、いつの頃からかこのスタイルになってしまった。弟みたいに丁寧に食べよう・・・。

今はもう会えない弟だけど、どこか遠い所で相変わらずこの食べ方でみかんを食べているのだろうか?ねーちゃんは荒っぽく今日もみかんをびりびりやっているよ。もう会うことのない弟をふと思い出し、遠い冬、皆んなでこたつに入りながらわいわいと食べたみかんの味を懐かしく思い出した。もう戻らない冬・・・。人って簡単に二度と会えなくなっちゃうんだな・・・。悲しいけど。