その頃、弟はよく「臭い臭い」と言っていた。
弟が一人暮らしをしていたアパートから母と一緒に住むために一軒家に引っ越した事を母と疎遠になっていた私は知らずにいた。母が入院したとの連絡を受け、初めてその家を訪れたのだが、弟も母の入院や仕事で忙しかったのだろう。家は散らかっていてひどかった。そして家の中には消臭剤やルームフレグランスといったものが、数多く置かれていた。弟は買い物にいくたび、スプレーや消臭剤を買ってくるので数は増えるばかり。家の惨状を見かねた私と娘が家の片付けと掃除のために、一か月近くほぼ毎日通ってキレイにし、換気をしても弟の「くさい臭い」は止まらなかった。
そんな事をこの間ふっと思い出しネットで少し調べてみると、霊にも臭いがあるというのだ。もしかしたら弟は臭いでそういうものを感じていたのかもしれない。だから臭い臭いと言っていたのだろうか?そう思うと私がその家を少し怖くて気味が悪いと思っていたのもあながち間違ってなかったのかもしれない。
なんとなく変だなと感じる違和感のようなものや理由もないけど嫌だという感覚や直感のようなものは大切にした方がいいと思う。小さな事だけどそれが何らかの危険を知らせるサインである事も多い。自分の心に耳を傾け素直に従う事は時に自分を守ることにも通じると思う。身近な2人のその後を思う時、私がもう少し気が付いていたら後悔することもあるけれど過ぎてしまった日々は残酷にもう戻らない・・・。