なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

一枚の紙切れと音を立てて切れた何か

外出先から帰ってくると、ポストに一枚の紙が入っていた。庭木が道路にはみ出て通行人の邪魔になっているというものだった。すぐさま娘と2人指摘された部分を剪定した。木を2人で手分けして切りながら自分の心はひどく動揺していた。というのも、去年庭木を整理して過去一スッキリと手入れされているからだ。それからも定期的に娘に手伝ってもらいながら、剪定もしている。道路ぶちに家が建っているから少しでも迷惑にならないように、それ以前からも気を付けているつもりだったからだ。

ここに住んで17年余り。一度もそのようなお𠮟りを受けることはなかったから、正直驚いたといった方がいいかもしれない。もう根元近くから切ってしまおうか、ふと自分の頭にそんな考えが浮かぶ。大切にしてきた木に対し、初めてそんなことを思う。我が家のシンボルツリーとして、訪れる人も家の横を通る人にもよくその木は褒められた。

でもよく考えてみれば、そんな狭い所に植える木ではないのかもしれない。もっと大きな敷地にのびのびと自由に両手を伸ばして生きている方が自然な木。それに植えた当時のような賑やかさはもう家にはないのに、いつまでも過去を維持していることに、何の意味があるというのだろう?そんな自分の気持ちを察してか、娘が「もうこれくらい切れば大丈夫じゃない?」と言ってくれた。剪定した木をゴミ袋に詰めていると、なんだかすごく疲れて涙が出そうになった。自分の中の何かがぷつりと音を立てて切れた。