なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

予言のヘラ

気が付けばいつの頃からか裁縫箱の中にあったピンクのヘラ。どういう理由で私の元にあったのかは忘れてしまってよく分からないけれど、印をつけるためのそのヘラには、カタカナで名前が彫ってあった。大人になってもその裁縫箱をしばらく愛用していたけれど、ヘラで印はつけずいつもチャコペンかルレットとチャコペーパーを使っていたから、存在をすっかり忘れていた。

結婚して数年経ったとき、裁縫箱を新しくしようかなと思った。物が増え、手芸の材料や道具が入りきらなくなってしまったからだ。木製で引き出しがついた少し大きめのものを購入して、そこに移し変えることにした。糸や針、ハサミ、定規、リッパーなど細々色々ある。木の引き出しに一つずつ入れていく。針山は一番上のオープンになるところに入れた。そうして移す作業をしていたら、忘れていたヘラが底の方から出てきた。あれ?小学生の時、いつの間にか私の裁縫箱に入っていたやつだ。手に取りその彫られた名前を見て驚いた。そのカタカナで彫られた名字は結婚した私の名字だったからだ。

数十年の時を越えその名字になっていた私。残念ながら、何回かの引っ越しと断捨離により、ヘラは失くしたか処分したかで、今はもうない。ヘラはその名字に私がなるのを知っていてそっと私の裁縫箱に入っていたのだ。とっても不思議だけれど、こういうことってあるんだなあと最近また手芸をはじめて思い出したのだった。ほんと不思議。