なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

ピンクのモヘアさん

それは淡いピンクにからし色や紫、小さなバラみたいなローズ色、そしてシックな灰色とみずみずしい水彩絵の具をそっとあちこちに置いたみたいに色が散りばめられたモヘアで編まれたものだった。娘は途中までその糸で編み物をしてマフラーの途中みたいな形で終わっていた。長さにして60cmくらい。モヘアだからほとんど編み直すこともできないからと処分しようとしていたものを私がもらうことにした。

モヘアのふわふわ柔らかい手触りに優しい色合い、そして手に持っているのを忘れるくらいの軽さ。すごくかわいいから何かに使いたいなあ~って考えていたら、ふと台所にある木箱に目がいった。こげ茶色の木箱にはお菓子や紅茶、お砂糖なんかを入れている。その上には自分がかけた茶色の布。最近肩が凝るからと布の端を始末せず適当に折って。毎日その布をめくるたび何とかしなくてはと思っていた。

そうだ、この木箱にかけたらどうだろう?茶色の布をはずして、ピンクのモヘアをかけてみる。大きさもピッタリ。こげ茶色とピンクの組み合わせってすごくいい。毛糸で編んだものを木箱にかけると、こんなにかわいいなんて自分の中では新鮮で新しい発見をしたみたいでうれしかった。

こうやって既存の考え方から少しずらして物を見てれば、今まで気が付かなかった色々な使い方、活かし方ができる。柔らかくふんわりとして、木箱の中のお菓子や紅茶等を守ってくれている。茶色の布のように光を全く通さないわけではなく、ほんのりと編み目のすき間から光を通し、それでいて落ち着かない訳ではない。なんだか木箱の中の住人達も柔らかく包まれてうれしそう。

こんな中途半端は何にもならないなんて、人でも物でも思わないで少し場所を移動してみれば、喜ばれることもある。半端なものなんてないのだ。一人一人が色んな形をしているからこそ時に思いもよらない方向でぴったりと組み合わさって驚くような関係性を築けたりするのだ。マフラーにはなれなかったけれど、ピンクのモヘアさんは木箱を優しく守る屋根として台所で新しく生きていく。