なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

花盗人と花植人

花泥棒は罪にならないと、よく昔母が言っていた。私はそうなのかな?とあんまり納得できずにいた。だって、種や苗から大切に育ててやっと花が咲いたのに、それを愛でることすらできずに奪われるなんて、ひどすぎる。人の想いや大事にしているものを、自分の欲だけで取るなんて、想像力に欠けた行動で、とても悲しい。私も何度かそういう悲しい気持ちを体験したことがあった。

ここに引っ越してきた当初、私は家の周りに塀や柵をつけずに外に向かって開放的に緑いっぱいの庭にしようと思っていた。そして計画を立てて、ラベンダーやローズマリーなどのハーブをまず、道路に面した庭の端っこに植えた。大きく成長したら、低木ながらも、生け垣のようになるだろうと想像して。

ある日の休日、家族で外出し帰ってきたとき、知らないおばさん3人が私の家の庭にいた。そして、私が数日前に植えたラベンダーに手をかけていた。帰ってきたら、慌てていなくなる3人。怖かった。それから数日後、今度は裏庭に知らない中年の夫婦が立ち、レンガで作った花壇に植えたランタナのところに立っていた。車を横づけにして人の庭に勝手に入って堂々としている。「何しているんですか」と言うと、「可愛い花だね」とだけ言って、苦笑いして車で去っていった。そして、3度目は、ゼラニウムのピンクの花がキレイに咲いたなあと嬉しくなって、次の日の朝見に行ったとき、引き抜かれて、跡形もなくなっていた。それで仕方なく柵をつけた。

そんな悲しい事があったけれど花が盗まれ柵をつける少し前、一人のおばあさんが裏庭にいる私に声をかけてきた。手には何やら植物を持っている。「ここは方角的によくないから、これを植えときなさい。災いをよけてくれるよ」とその苗木のようなものを私にくれいなくなってしまった。よく見るとそれは南天だった。難を転じるという縁起のいい木。鬼門にあたる裏庭のその場所に、今も南天は植わっている。盗る人もいれば、、そうやって植える人もいる。私も南天のおばあさんにような人でありたいと思う。