なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

憧れのノート

その日小学校近くの駄菓子屋に一人で来ていた。駄菓子や文房具、奥にはゲームコーナーと今では懐かしいつくりのお店。そこで前から気になっていたノートをパラパラとめくって見ていた。リボンの柄が付いていて色は淡いピンク、かわいいなあ・・・欲しいけど勉強以外のノートなんて買ってはもらえない。でも諦めきれずそっとまた中を見る。

お店には私の他におじさんが一人だけ。おじさんは駄菓子屋のおばさんと話していた。しばらくして、おじさんは帰るようで、入口近くのノートコーナーにいた私は、おじさんが通るから少し体をよけて、またノートを見ていた。

おじさんが店を後にして少しすると、おばさんが急に私にこう言った。「さっきのおじさんを走って追いかけて店に戻ってくれるように言ってほしい」と。私は頷いて、店を出て全速力でかけていった。走るのは速くないけど、店を出て間もなかったからなんとかおじさんに追いついた。もう少し遅かったら、すぐ先にあるバスの停留所からバスに乗ってしまっていただろう。よかった。知らない人と話すのは恥ずかしかった子供時代の私はおじさんの体をつんつんとして「おばさんが店で呼んでる」と一言だけ。すると「うん、そうかい、ありがとう」と言って私と一緒に店に戻った。

ほっとした表情のおばさんは、おじさんとまた話し始めた。私はもう帰ろうと思って入口に向かっていくと、おばさんが「ノート見てたやろ。好きなの一冊持って帰り。おじさんを店まで連れて帰ってくれたお礼よ」と言う。私はすごく嬉しくてさっき見ていたリボンのノートをもらうことにした。お礼を言って大切に胸に抱えて帰った。家についてもう一度ノートを見る。リボンとレースの柄で可愛くてうっとりした。らくがき帳にそのリボンやレースの柄をマネして書いたりもした。ノートはもったいなくて最後まで何も書けずじまい。大切に机の引き出しにしまって、時折パラパラ見たりして大事にしていた。そうやって大事にしていたノート。宝物だった。

あの日何の用事で一人駄菓子屋に行ったのかは今でも思い出せないけれど、きっと神様みたいな存在がいて、憧れのノートを手にするチャンスを与えてくれたのだと思う。今でもかわいいノートを見ると思い出す懐かしい出来事。

心から願っていれば、必ずきっと夢や希望は叶うんだよって教えてくれたのだなあって思う。本当に、ありがとう。