なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

ムッシュとアイスクリーム

二十歳くらいの時、私は一人新幹線に乗っていた。

途中の名古屋でムッシュ2人が私の横に座った。

車内販売が回ってきて、ムッシュ一人が「アイスクリーム2つ」とお金を出した。

車内販売かあ・・いいなあ・・と思った。車内は人がいっぱいで少しムンムンしていたから、冷たいアイスがすごく美味しそうに見えた。でも当時そんなにお金も持っていなかったから、じっとその様子を見ていた。

すると、そのムッシュが、「おみゃーさんも食べるか?」と私に聞いてきた。名古屋弁でよく分からなかったけど、素直に「うん」と頷いてしまった。まるで、お父さんか親戚のおじさんにするように自然にだ。見も知らない、ちょっと前から隣に座っているムッシュなのに・・・。

「じゃあ、アイス3つ」と注文し、冷えたアイスとスプーンが私にも渡される。「ありがとうございます」と言うと、「食べよう」とムッシュ。3人で横に並んで、アイスを食べる。不思議な光景だ。すごく冷たくて美味しくて、うれしかった。

隣にたまたま座ることも偶然ではない。なにかの”えん”なのだ。今、その時のアイスをごちそうしてくれたムッシュの年齢に近くなった。私はそんな粋な大人になれているのかな・・?まだまだそんな風に自然に人にやさしくできていない気がする。昔は本物の大人がたくさんいた。こわい時もあったけど、大人ってカッコイイなって思う事も多かった。私もそんな大人になりたいなあと、十分すぎる大人なのに思う今日この頃である。