なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

暗い川底でその時を待つ

休日のショッピングモールの人混みに娘の同級生の姿を見た。隣にはパートナーの姿。向こうは気付いていない。ほんの一瞬のこと。すぐに人混みに飲み込まれて2人の姿は消えていった。私の中の彼女は小、中学生の時のまま。高校になり疎遠になってしまったから、それ以上自分の中の情報は更新されていない。ただ変わらない姿だったから娘も分かったようだ。家の隣の男の子も、この春中学生になったみたい。あいさつ程度の付き合いだけれど、この間まで私に「九九は十の段まである」などと得意げに言っていたのに・・・。

すごいスピードで変化していく人や周り。私も娘も、ついこの間までその急流の中をなんとか泳いでいた。今は力つき川底にじっと身を置き、上手に流れに乗り進んでいくものたちを見ている。私も人から見れば変わっているだろう。染めるのをやめた髪は銀色が多くなったし、一緒に行動する家族の単位も減った。瘦せた太ったなども分かりやすい変化だろうし・・。

いったい私は何をしていたのだろう?変化を人より強く望みできる努力はしてきたつもりだ。でも何も変わらない。むしろ悪化している状況と、そうやって時々感じる他人の変化を見るにつけ無力感に襲われるのだ。「何をやっても無駄だよ」もう一人の自分が耳元でささやく。「あらがったって何も変わらない、やめてしまいなよ」頭の中で声がする。暗い川底で岩陰に身をひそめ、小さくエラで呼吸し時折差し込む光と仲間の影に驚き身を隠す。これでも精一杯頑張ってきたんだ。人から見ればそう見えないかもしれないけれど、自分なりにもがいてそれでも前に進んで希望を捨てずにここまで来た。傷だらけだけど、まだ泳げる。皆んなと同じようには無理でも、穏やかな川の支流まで泳いでいけば、自分達でも光を感じられキレイなみどりの水草に身をまかしゆっくりと生きていけるはずだ。自分達のペースで楽に呼吸ができるところ・・・どこにあるのだろう・・・今は暗い川底でじっと激しい流れに耐え、明るい小川の場所を探す2匹の魚。大丈夫。あきらめず腐らず、出来ることをやって、その時を待とう。あともう少し、もうすぐだ。