なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

切ない夜の歌声

駐車場を挟んだ向かい側に家が新しく建ち始めた。この間、神主さんが来て地鎮祭をしていたと思ったのに、もう基礎が出来ている。早いなあと思っていると、それから少しして自宅のポストに新築工事のご挨拶が入っていた。来週には上棟工事をするようで騒音や埃で迷惑を掛けます、みたいな事が書かれていた。

そこには元々家があった。が数年前に取り壊され、一部取り残された庭木が家の名残を感じさせるのみだった。そういえば、男の人が一人住んでたなあ・・と思い出した。今からもう何年も前、その家に住んでいた男の人が夜中に五輪真弓の「恋人よ」を泣きながら大声で歌っていたことがあった。私はその声に目を覚まし、窓の外を見るとぼんやりと明かりのついた家の裏庭に座っているその人らしきシルエットが見えた。あまりに哀しく切ない歌声に私は起こされたことに腹が立つことはなく、いつも一人静かに暮らしているその人に一体何があったのだろうとむしろ心配を覚えたくらいだった。

少し空気がひんやりしはじめた、なんだかさみしい夜に、一人男の人が泣きながら歌う「恋人よ」。今思い出しても胸が締め付けられるとてもさみしい夜だった。

 

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