なんだ大丈夫じゃん

イラストと文で紡ぐ母と娘の日々のこと。

マイカー

私は3人兄弟の長女。一番下の弟とは6つ離れている。

私の友達が遊びにくると弟はいつも部屋の扉のところから、こちらをのぞいてくる。私が向こうに行くように言おうとすると、友達がいつも「かわいい。一緒に遊ぼ。」と手招きをするからだ。

部屋に入ると、ちょこんと正座して、近すぎず遠すぎずな位置で大人しくしている。友達におやつをもらったり、遊んでもらったりして、毎回嬉しそうだ。私の周りの友達は2人兄弟が多かったから、小さい弟は珍しかったのもあって、大人になっても結構弟のことが話題になったりするくらい人気だった。

ひとしきり、おしゃべりをして、外へ遊びに行こうとすると、弟も自分のマイカーにまたがりスタンバイする。家の中で遊ぶ、プラスチックの車を弟は外で乗り回していた。キャラクターのその車は、タイヤはボロボロで、年季が入っていた。危ないから家にいるように言うのだけど、両足を思いっきり蹴って、結構なスピードで私たちのチャリについてくる。その頃住んでいたところは、山を切り開いて作ったような団地で坂が多い。「ねーちゃん。ねーちゃん。」と言いながらついてくるので、友達もチャリを止め、遊び先を近くの公園に変更し、弟を遊ばしてくれるのだ。

弟は大人になった今でも、末っ子特権の甘え上手をいかんなく発揮して、会社や友人などの人間関係をうまくやって、世の中を上手に渡っている。

久しぶりに法事で顔を合わせたとき、弟に「ねーちゃんは、人付き合いが下手すぎるんだ」と言われた。自分がそこまで下手だと思っていなかったけど、弟に言わせれば、バカ正直すぎるらしい。もっと上手く流せと。

そうなのかな?でも、ウソはつけない。すぐ顔に出るし、ウソついてまで、付き合いたくないと思ってしまうから友達も少ない。兄弟の中で私一人がそんな感じだ。まあそれでいいかなと思っている。無理してまで、たくさんの人と付き合うこともない。

そんな弟は、その後マイカーで前のめりになってこけ、前歯が少し歪んでしまった。乳歯の間、歪んだ前歯で笑う弟・・・。永久歯になってちゃんと生えてきて、母もホッとしたみたいだ。

大人になっても、弟はいつまでも子供の頃のままの位置で私の中にいる。皆んな色んな性格や得意、不得意があるから、この世はバランスがとれて素晴らしいんだよ。今度会ったら、そう言うことにしよう。