うちの玄関は道路からすぐのところにある。入口付近に塀というか囲いがないから、ひょいと道から上がってこれてしまう。少々落ち着かないけど、しょうがない。
当時、玄関に向かって左側に小さな傘立てを置いていた。その日は夕方から夜通し雨が降っていたと思う。傘を傘立てに入れ、家に入った。翌朝、出かけるときに傘がないことに気が付いた。盗まれたのかな・・・と少し悲しい思いもしたが、自分が玄関脇とはいえ、外に置きっぱなしにしていたから、しょうがないか・・と思っていた。
それから数日経って、知らない間に傘が戻ってきていた。キレイに乾かされて、きちんとくるりと巻かれて、ボタンも留めてあった。誰が持っていって返してくれたのかは、分からない。
でも、あの夜は雨がひどくて、たぶんいけないことだとは分かっていたけど、傘を黙って借りていったのかなと思った。何かすごく丁寧な人で、そうしなければいけない特別な理由があったように思えた。
本当は怒っていい出来事なのかもしれないけど、逆にお役に立ててよかったですみたいな気持ちになった。戻してくれた傘の扱い方を見たとき、その人の人となりが見えたからかもしれない。返してくれて、ありがとう。
